感想あるいは通過点

優しい嘘と化けの皮の下

自殺日和

 酷暑も過ぎ去り、外では台風が猛威を奮っている。暑さではなく季節が変わること自体に体が呻く。紫に染まった地図は、また一周するまで見ることは無いだろう。

 世間の落ち着きを感じる。疫病患者が増えようが電車は満杯になるし、アルコール消毒液はスルーされるし、リモートは存在ごと忘れられようとしていた。レストランの衝立だけが、まだ渦中なんだよと囁く。

 充満した絶望に、文句をつける元気もない。もしそれが世界の答えなら、全くの同意見だ。もう疲れ果ててしまった。

 私を襲うものが壮絶な苦痛だとか、激流のような不幸だとか、そういう類であればもう少し頑張れたかもしれない。それをなんとかすれば幸せになれるかもしれないという希望は、人を盲目にする。少しだけ現実から意識を遠ざけてくれる。でもそうではなかった。

 少しだけ息がしにくい。なんとなく体が重い気がして、世界がそっぽを向いている。そんな感覚につける薬はない。傷がなければ治すことはできない。課題がなければ取り掛かることはできない。そういうものの積み重ね。生きている価値も意味も楽しみもない。出来ることもないし、やりたいとも思えない。

 死にたいほど苦しいというより、生きていることに必要性を見いだせない。

 やれることはあまりに少ない。死ぬことは出来ないから、夢想する。もしも死ぬのだとしたら、どんな日が良いのか、と。私は曇りの日を選んだ。ここまで書いて疲れてしまった。

 曇りの日は良い。私の心模様みたいで。